
更新日 2026-07-30
※記事内の画像は一部生成AIを使用し作成しています
物流KPIとは、現場の課題を数値で見える化し、改善につなげる指標です。この記事では、EC運営者や物流部門の方に向けて、指標の一覧と計算式、設定手順、梱包工程の自動化による改善事例までを、現場の一次情報を交えて解説します。自社のKPIを何から始めるべきかが分かります。
【この記事の著者】

ダイワハイテックス編集部
ダイワハイテックス編集部では、物流・倉庫業務、梱包・包装に関する実務情報を発信しています。国内150ライン以上への導入実績と、社内エンジニアによる設計・保守の知見をもとに、現場の作業効率化、省人化、コスト削減につながる情報を分かりやすくお届けします。
物流KPI(物流管理指標)とは

物流KPIは、物流業務が適切に管理されているかを定量的に評価するための指標です。実車率や誤出荷率などの代表的な数値を継続的に測定することで、感覚や経験ではなく客観的なデータに基づく現状把握と改善が可能になります。
KPIの定義とKGI・CSFとの関係
KPIは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。事業の最終目標に向かう過程で、進捗や達成度を数値で測るための中間指標を指す言葉です。
物流分野では、このKPIを輸送・保管・庫内作業などの各プロセスに適用し、現場の状態を数値で把握できるようにします。代表的な物流KPIには、人時生産性、積載率、誤出荷率などがあります。
KPIを正しく運用するには、関連する2つの指標との階層関係を押さえておくことが大切です。
| 用語 | 意味 | 例 |
| KGI(重要目標達成指標) | 企業や部門が目指す最終ゴール | 物流コストを年間で15%削減する |
| CSF(重要成功要因) | KGI達成のために特に重要な施策・要因 | 庫内作業の生産性向上 |
| KPI(重要業績評価指標) | CSFの実行プロセスを測る中間指標 | 人時生産性を80ピース/人時に引き上げる |
「ゴール(KGI)」「成功要因(CSF)」「中間指標(KPI)」という3層構造で設計することで、目標達成までの道筋が論理的に整理されます。
国土交通省とJILSが示すKPIの枠組み
物流KPIを語るうえで欠かせない一次資料が、国土交通省が公表している「物流事業者におけるKPI導入の手引き」です。同手引きでは、物流KPIを次の3つのカテゴリに分類しています。
- コスト・生産性
- 品質・サービスレベル
- 物流条件・配送条件
この3カテゴリは、業界横断の共通フレームとして広く参照されており、自社のKPI設計を行う際の出発点になります。あわせて、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)も「ロジスティクスKPI活用の手引き」を公開しています。荷主と物流事業者の双方がKPIを共通言語として使うための考え方が示されており、本記事の指標一覧もこれらの一次資料の分類に準拠しています。
現場に入ると、標準の3カテゴリだけでは梱包工程のボトルネックが指標として拾いきれない、という課題に突き当たることがよくあります。この記事では、手引きの標準フレームを土台にしつつ、当社が現場で実際に測定している工程別のKPI、とりわけ梱包工程のKPIまで踏み込んで解説します。
物流KPIが今、注目されている背景
物流KPIへの関心が高まっている背景には、業界を取り巻く構造的な課題があります。ここでは、特に押さえておきたい要因を整理します。
2024年問題と人手不足による生産性向上の必要性
トラックドライバーの時間外労働の上限規制によって、物流業界全体の輸送能力が制約を受けるようになりました。同じ輸送量を確保するには、1運行あたりの効率を引き上げる以外に道がありません。このため、実車率や積載率といった生産性KPIの重要性が、これまで以上に高まっています。
倉庫内作業員の確保も年々難しくなっており、人件費は上昇傾向にあります。少ない人員で同等以上の作業量をこなすには、人時生産性のような指標で現状を可視化し、ボトルネック工程を特定する必要があります。人手不足の背景については、物流の人手不足はなぜ深刻化?原因と最新の解決策を現場目線で解説でもくわしく取り上げています。
EC市場拡大による多品種少量・多頻度出荷への対応
EC市場の継続的な拡大に伴い、通販物流の現場では「1件あたりの出荷量は小さく、件数は膨大」という構造変化が進んでいます。多品種少量・多頻度出荷は、ピッキング・検品・梱包の各工程で、これまで以上の精度とスピードを要求します。
特に梱包工程は、出荷件数の増加に比例して作業負荷が膨らみやすく、KPIの設計と改善が競争力を直接左右する領域になっています。当社が支援する現場でも、出荷のボトルネックが梱包工程に移ったという相談は年々増えています。
物流を取り巻く制度面の変化
近年は、荷待ちや荷役の時間を短くすること、積載率を高めること、物流を統括する担当者を置くことなど、荷主と物流事業者の双方にさまざまな対応が求められるようになってきました。こうした取り組みの一部には義務付けや罰則が設けられているものもあり、自社の物流を数値で説明できる状態、つまりKPIによる可視化の重要性はいっそう高まっています。
制度の要件や対応の内容は今後も見直される可能性があります。最新の詳細については、国土交通省などの公式サイトでご確認ください。制度の全体像は、物流の2026年問題とは?荷主企業の義務と今すぐ取るべき対策や物流2025年問題とは?2024年・2026年問題との違いでも整理しています。
物流KPIを設定する3つのメリット
物流KPIを導入することで得られる主なメリットは、次の3点に集約されます。
- 課題の見える化と原因特定の高速化
- 関係者間のコミュニケーション促進
- 公平で納得感のある人事評価の実現
1つ目は、数値で議論できることで改善のスピードが上がる効果です。2つ目は、共通言語ができることで感覚的な議論を減らせる効果です。3つ目は、努力が数値に反映されることで、現場のモチベーション向上にもつながる効果です。
特に物流業務は、現場スタッフ、管理者、経営層、荷主、配送会社など立場の異なる関係者が多く関わる仕事です。KPIを共通の物差しとして整備するだけでも、業務改善の議論の質が大きく変わります。
物流KPIの3カテゴリと指標一覧
国土交通省の手引きで示されている3カテゴリに沿って、代表的な指標と計算式を整理します。まずはコスト・生産性の指標です。
| 指標名 | 計算式 | 概要 |
| 保管効率(充填率) | 保管間口数 ÷ 総間口数 | 保管スペースの有効活用度 |
| 人時生産性 | 処理ケース数 ÷ 投入人時 | 1人時あたりの処理量 |
| 数量あたり物流コスト | 物流コスト ÷ 出荷数量 | 1単位あたりの物流コスト |
| 日次収支 | 1日あたりの収益 − 1日あたりのコスト | 日単位の収益性 |
| 実車率 | 実車キロ ÷ 走行キロ | 荷物を積んで走った割合 |
| 実働率 | 実働日数 ÷ 営業日数 | 車両の稼働状況 |
| 積載率 | 積載数量 ÷ 積載可能総数 | 荷物の積載効率 |
続いて、品質・サービスレベルに関する指標です。物流品質と顧客満足度に直結します。
| 指標名 | 計算式 | 概要 |
| 棚卸差異率 | 棚卸差異 ÷ 棚卸資産総数 | 帳簿在庫と実在庫のズレ |
| 誤出荷率 | 誤出荷発生件数 ÷ 出荷指示数 | 出荷ミスの発生頻度 |
| 遅延・時間指定違反率 | 遅延・時間指定違反件数 ÷ 出荷指示数 | 納品遅延の発生頻度 |
| 汚破損率 | 汚破損発生件数 ÷ 出荷指示数 | 商品の汚れ・破損の発生頻度 |
| クレーム発生率 | クレーム発生件数 ÷ 出荷指示数 | 顧客クレームの発生頻度 |
最後に、荷主と物流事業者の取引条件や配送設計の妥当性を評価する、物流条件・配送条件の指標です。
| 指標名 | 計算式 | 概要 |
| 出荷ロット | 数値そのもの | 1回あたりの出荷数量 |
| 出荷指示遅延件数 | 件数そのもの | 期日後に指示が出された件数 |
| 配送頻度 | 配送回数 ÷ 営業日数 | 納品先ごとの配送頻度 |
| 納品先待機時間 | 待機時間の平均値 | 納品先での待機ロス |
| 納品付帯作業実施率 | 付帯作業実施回数 ÷ 納品回数 | 契約外作業の発生状況 |
コスト系のKPIを最終的なコスト削減目標につなげる考え方は、物流コスト削減の方法18選や物流コストの内訳を5項目で徹底解説でも解説しています。
工程別に見るKPI設計のポイント

3カテゴリでの整理は全社視点では有効ですが、現場改善を進めるときは業務工程ごとにKPIを再整理した方が、施策に落とし込みやすくなります。ここは、実際に梱包現場へ設備を入れてきた当社の実務知見を交えて解説します。
入荷・保管・ピッキングの主なKPI
上流の工程では、次のように工程ごとに着眼点を分けてKPIを設定します。
| 工程 | 主なKPI | 着眼点 |
| 入荷・検品 | 入荷検品処理数、入荷遅延率、数量差異率 | 上流のボトルネック発見 |
| 保管 | 保管効率、ロケーション稼働率、デッドストック比率 | 後続工程への悪影響を防ぐ |
| ピッキング・仕分け | ピッキング生産性、ピッキング誤り率 | スピードと精度の両立 |
ピッキング生産性は、管理単位を「ピース数/人時」「行数/人時」「カートン数/人時」のいずれにするかで意味合いが変わる点に注意が必要です。SKUへの移動工数の比率が高い現場では行数単位、出荷検品をハンディターミナルで行う現場ではピース単位が適しています。
各工程のさらなる効率化については、ピッキング効率化の5つの方法や倉庫のロケーション管理とはもあわせてご覧ください。
梱包工程のKPIは見落とされやすい
EC物流の出荷件数増加に伴い、梱包工程はボトルネック化しやすい工程の代表格です。それにもかかわらず、KPIとして明確に管理されていない現場は少なくありません。梱包工程で押さえたいKPIは次のとおりです。
| 指標名 | 概要 |
| 梱包処理数/人時 | 梱包作業の生産性を示す中核指標 |
| 誤梱包率 | 商品違いや数量違いなどの梱包ミスの発生率 |
| 梱包資材ロス率 | 資材の無駄遣いやサイズ不適合の発生状況 |
| 梱包あたりの平均所要時間 | 1件あたりの梱包に要する時間 |
当社が数多くの梱包現場を見てきた経験からいえるのは、メール便の手作業梱包は熟練した作業者でも1時間あたり100件前後が実務上の上限になりやすい、ということです。この目安を基準値として持っておくと、自社の梱包処理数/人時に改善の余地が大きいのか、すでに手作業として頭打ちなのかを判断しやすくなります。
方式ごとの処理能力の目安を一覧にすると、次のようになります。数値は当社の実績や実務経験にもとづく目安です。
| 方式 | 処理能力の目安(1時間あたり) | 主な配送形態 | 改善効果が出やすいKPI |
| 手作業 | 100件前後(メール便・熟練者) | 全般 | ― |
| PAS-Line | 最大1,000件 | メール便 | 梱包処理数/人時、数量あたり物流コスト |
| MELT-Line | 1,000件前後 | メール便箱(最大サイズ) | 梱包処理数/人時、汚破損率、資材ロス率 |
| BOS-Line | 700〜900件 | 宅配便・宅急便・ゆうパック | 梱包処理数/人時、資材ロス率、汚破損率 |
手作業とPAS-Lineでは、単純な処理能力で大きな差が生まれます。梱包処理数/人時が頭打ちの現場では、オペレーションの改善よりも設備の導入のほうが伸びしろが大きくなる、という判断材料になります。
なお、ここで挙げているPAS-LineやMELT-Line、BOS-Lineは、いずれも当社が提供している通販物流向けの自動梱包ラインです。商品の封入や封かん、ラベル貼付までを一連の流れで自動化するシステムであり、PPバンドやPETバンドで荷物を結束する梱包機や結束機とは役割が異なります。
商品のサイズや配送の形態によって、重視すべき梱包KPIも変わります。メール便は件数が膨大になりやすいため、まず梱包処理数/人時の底上げが効果的です。宅配便のように箱を使う場合は、箱のサイズ選びで資材費と配送料の両方が変わるため、梱包資材ロス率や箱サイズの最適化が重要になります。シュリンク包装では、輸送中に商品が動きにくくなるため、汚破損率の低減につながりやすいという特徴があります。
梱包工程を人の力で改善する具体策は、梱包作業の効率化|人件費1/2を実現した9つの改善アイデアや梱包アルバイトの採用が難しい現場へでも紹介しています。
出荷・配送工程のKPI
出荷・配送工程では、品質と効率の両面から次の指標を組み合わせます。
- 誤出荷率
- 定時出荷率
- 積載率
- 納品付帯作業時間
これらをクレーム発生率と連動して見ることで、現場品質と顧客体験の関係性が可視化されます。出荷や配送のリードタイムの考え方は、出荷管理とは?業務の流れ7ステップやリードタイムとは?計算方法と短縮の実践策でも解説しています。
物流KPIを設定する5つのステップ
KPIの設定は、思いつきで指標を並べるのではなく、段階的なプロセスとして設計することが重要です。全体の流れは次のとおりです。
- 経営目標(KGI)と現状課題の整理
- 対象範囲の絞り込みと担当チーム編成
- SMARTモデルに沿ったKPI選定
- データ収集基盤の整備と現状値の測定
- 目標値設定とPDCAによる継続改善
まず何を最優先で改善するのかを明確にし、対象を1〜2工程に絞って推進担当者を決めます。そのうえで指標を選び、Excelなどでデータを集めて現状値を測り、月次や週次でレビューしながら改善を回していきます。以下では、つまずきやすいポイントを補足します。
KPIツリーで指標を分解する
ステップ1で定めたKGIを、いきなり現場のKPIに結びつけるのは難しいものです。そこで役に立つのが、KGIを枝分かれさせて分解するKPIツリーという考え方です。
たとえば「物流コストを年間15%削減する」というKGIを頂点に置き、その下に「庫内作業の生産性向上」や「配送効率の改善」といったCSFを配置します。さらにその下へ、人時生産性や梱包処理数/人時、積載率といった測定できるKPIをぶら下げていきます。
こうしてツリー構造に整理すると、最終目標と現場の数値のつながりが見えるようになり、どの指標を動かせばゴールに近づくのかを判断しやすくなります。指標は多いほどよいわけではないため、経営課題に直結する重点KPIを3〜5個に絞り込むことをおすすめします。
KPI管理はテンプレートやExcelから始める
KPIの測定は、専用のシステムがなくても始められます。まずはExcelで、次のような列を持つ管理表を作るところからで十分です。
| 指標 | 計算式 | 現状値 | 目標値 | 測定頻度 | 担当 |
| 梱包処理数/人時 | 梱包件数 ÷ 投入人時 | 100 | 150 | 週次 | 梱包リーダー |
現状値と目標値を並べて可視化するだけでも、現場の議論は数値ベースに変わっていきます。運用が定着し、より深い分析やリアルタイムでの把握が必要になった段階で、WMSやTMSの導入を検討するとよいでしょう。WMSの選び方は、WMSとは?機能・メリット・選び方を物流現場のプロが解説でくわしく解説しています。
SMARTモデルの実践イメージ
「倉庫コストを5%削減する」というKGIに対して、ピッキング生産性をKPIとする場合の設計例は次のようになります。
| 観点 | 設計内容 |
| Specific(具体的) | ピッキング生産性を「行数/人時」で測定 |
| Measurable(測定可能) | WMSのログから日次で自動集計 |
| Achievable(達成可能) | 現状70行/人時から段階的に80、90を目指す |
| Relevant(関連性) | 倉庫コスト削減という最終目標に直結 |
| Time-bound(期限付き) | 6ヶ月以内に80行/人時を達成 |
SMARTの5観点を満たすと、KPIが「ただのお題目」ではなく、現場が動ける具体的な目標として機能するようになります。
物流KPI運用でつまずきやすい4つの落とし穴
KPIを導入したものの、思うような成果が出ないというケースは少なくありません。典型的な失敗パターンは次の4つです。
- KPIを増やしすぎて現場が疲弊する
- 高すぎる目標設定で形骸化する
- データ収集が手作業で属人化する
- 数値だけが独り歩きし、行動につながらない
測定と報告だけで時間が消費されると、肝心の改善活動に手が回らなくなります。目標が高すぎれば未達が常態化し、担当者が固定化すると運用が止まります。数値を出して満足してしまい、改善施策に踏み込めないケースも多く見られます。
特に1つ目のKPIを増やしすぎる問題は、導入初期によく見られます。スタート時は3〜5個程度に絞り、運用が定着してから段階的に拡張することをおすすめします。
KPI改善のための具体的なアプローチ
KPIを設定したあと、どう改善行動につなげるかが本番です。ここでは段階別に紹介します。
現場オペレーション改善が最初の一手
最も投資対効果が見えやすいのが、現場オペレーションの見直しです。次のような施策が代表例になります。
- 動線の最短化
- 保管ロケーションの最適化
- 作業手順の標準化
これらは追加投資を抑えつつ、人時生産性を改善できる施策です。まずはこの領域から着手し、効果が出始めた段階で次の打ち手に進むのが定石です。
ITツール活用で測定と分析を自動化する
KPIの収集と分析を自動化するうえで、WMS(倉庫管理システム)、TMS(輸送管理システム)、BIツールの活用は大きな効果を発揮します。
リアルタイムでの数値把握、グラフによる可視化、異常値の自動検知などが可能になり、改善活動のスピードが格段に上がります。データ活用を進めたい場合は、物流DXとは?課題と進め方を実証データつきで解説やWMS比較15選|失敗しない選び方も参考になります。
設備投資・自動化で工程KPIを抜本改善する
人手作業に依存した工程は、改善努力を続けてもいずれ生産性の頭打ちが訪れます。中でも梱包工程は、人時生産性、誤梱包率、梱包処理数のいずれにも影響する重要工程でありながら、人海戦術に頼っている現場が多いのが実情です。
通販物流の梱包工程を自動化する自動梱包ラインの導入は、処理能力を大きく引き上げ、人件費に関するKPIを改善する有力な選択肢になります。当社の実績としても、メール便梱包に特化した構成で、手作業からの大幅な処理能力の向上や人件費の削減につながった例があります。商品サイズや配送形態によって最適な構成は異なるため、自社の出荷特性に合わせた設計が重要になります。
設備投資による自動化の進め方は、自動梱包機とは?種類・選び方・費用を導入実績200件超のメーカーが解説や物流自動化の進め方とはでくわしく解説しています。
設備投資のROIと着手順序の考え方
設備投資を検討するときは、導入にかかる費用だけでなく、どのくらいの期間で投資を回収できるかという視点を持っておくと判断がぶれにくくなります。基本的な考え方はシンプルで、自動化によって削減できる人件費や資材費が、投資額に対してどの程度の期間で積み上がっていくかを見ていきます。
あわせて、出荷量の増減に人員を張り付けなくてよくなること、採用が難しい状況でも人手に頼りすぎずに済むこと、梱包ミスの減少によって再出荷のコストを抑えられることなど、金額に表れにくい効果も評価に含めると、判断の精度が上がります。具体的な回収期間は現場ごとの人件費や出荷量によって大きく変わるため、試算を行う場合は、自社の実際の数値をもとに、仮に一定の削減率を仮定した場合の試算例として計算することをおすすめします。
現場改善と設備投資のどちらから着手するかで迷ったときは、次の順序で見極めると判断しやすくなります。
- 経営目標に最も直結する梱包KPIを1つ選び、現状値を正確に把握する
- 動線の見直しや標準化などの現場改善で伸びしろがあるかを検証する
- すでに手作業の限界値に近く伸びしろが小さい場合は、自動梱包ラインの導入を含めた設備投資を検討する
省人化投資の判断基準は、省人化投資とは?物流現場の実例で学ぶ判断基準とROIの考え方でも整理しています。判断に迷う場合は、無料相談もご活用ください。通販物流の現場で多く採用されている自動梱包ラインを、配送形態別に紹介します。



梱包工程の自動化によるKPI改善事例

ここでは、自動梱包ラインの導入によって梱包工程のKPIが改善した事例を紹介します。いずれも、人手による梱包の限界を設備投資で突破した、当社の支援先の実例です。
通販物流における処理能力の改善
ある大手流通倉庫では、メール便梱包を従来は手作業で行っていましたが、自動梱包ラインの導入によって処理能力が大幅に向上しました。改善した観点は次の2つです。
| 観点 | 改善内容 |
| 梱包処理数/人時 | 手作業から自動化への切り替えで大幅に向上 |
| 数量あたり物流コスト | 人件費の削減につながった |
これは、コスト・生産性カテゴリの2つのKPIが同時に改善した事例であり、設備投資が物流KPI改善の決定打となり得ることを示しています。他の改善事例は、物流改善の事例10選や物流の効率化を実現する7つの方法|現場実証データでも紹介しています。
EC物流における誤梱包・誤出荷率の改善
人手作業に依存した梱包工程では、ヒューマンエラーが一定の確率で発生し、誤梱包率や誤出荷率の改善には限界があります。自動梱包ラインに加え、梱包管理カメラのような誤配送を防ぐ仕組みを組み合わせることで、品質系のKPIを大きく引き上げられます。EC事業者にとっては、出荷件数が増えても品質を維持できる体制づくりにつながります。
こうした品質の安定は、汚破損率やクレーム発生率の低下を通じて顧客満足度にも波及します。越境ECのように海外への配送が絡む現場では、梱包品質の安定が顧客からの評価に直結しやすく、品質と効率を両立させたい現場ほど自動化の効果が大きくなります。
導入事例の詳細や、各業界での改善内容については、事例集にまとめています。自社の状況と照らし合わせる際の参考としてご活用ください。
物流KPIに関するよくある質問
導入前に迷いやすいポイントを、質問と回答の形で整理します。
Q1 中小規模の物流現場でもKPIは導入すべきですか
導入をおすすめします。中小規模の現場ほど属人化や感覚値での運用が起こりやすく、数値化のメリットが大きく出ます。最初は人時生産性、誤出荷率、出荷件数の3点だけでも始められます。
Q2 KPIは何個くらい設定するのが適切ですか
導入初期は3〜5個程度が現実的です。多すぎると測定の手間が増え、現場の負担になります。改善のサイクルが回り始めてから、段階的に拡張していくのがおすすめです。
Q3 KPIのデータ収集に必要なシステムはありますか
導入初期は既存のExcelや作業日報からスタートして問題ありません。運用が定着し、より深い分析が必要になった段階で、WMS・TMS・BIツールの導入を検討してください。
Q4 荷主と物流事業者でKPIを共有する際の注意点は何ですか
KPIを共有する目的と、両者にとってのメリットを最初に合意しておくことが重要です。一方的な押し付けにならないよう、定義・測定方法・評価基準を明文化し、定期的にすり合わせの場を設けることが望まれます。
Q5 梱包工程のKPIが伸び悩む場合、どこから手をつけるべきですか
多くの場合、原因は人手作業の限界にあります。まず経営目標に最も直結する指標を1つ選んで現状値を把握し、動線や標準化などの現場改善で伸びしろがあるかを検証します。それでも伸びしろが見えない場合は、自動梱包ラインの導入を含めた設備投資を検討するとよいでしょう。判断に迷う場合は、無料相談もご活用いただけます。
Q6 自動梱包ラインの導入にはどのくらいの期間がかかりますか
機器の構成や送り状発行システムによって異なりますが、当社では数ヶ月程度での納品実績があります。梱包ラインは停止すると出荷が滞り、大きな損害につながります。自社の機械を熟知したエンジニアによる保守やメンテナンスの体制まで含めて検討することをおすすめします。
Q7 物流KPIのテンプレートはありますか
専用のシステムがなくても、指標、計算式、現状値、目標値、測定頻度、担当という列を持つExcelの管理表があれば十分にスタートできます。本記事で示した表を参考に、自社の重点KPIだけを並べたシンプルな表から始めてください。
Q8 物流の評価項目とは何ですか。KGIとの違いは何ですか
物流の評価項目は、主に「コスト・生産性」「品質・サービスレベル」「物流条件・配送条件」の3つのカテゴリに分類され、積載率や人時生産性、誤出荷率、納期遵守率などが代表例です。これらはKGIという最終目標を達成するための中間指標にあたります。たとえば物流コストの削減率をKGIに置いた場合、人時生産性や積載率がその達成につながるKPIになります。
まとめ 物流KPIで「測れる物流」を実現する
物流KPIは、単なる数値管理のツールではなく、現場の課題を可視化し、関係者の合意形成を促し、改善行動を継続させるための共通言語です。
国土交通省やJILSが示す3カテゴリを基盤としつつ、KPIツリーで自社の経営目標と現場の数値をつなぎ、工程ごとに具体的な指標を設計することで、KPIは初めて実務で機能します。
特に、EC市場の拡大と人手不足が同時に進行する現在は、梱包工程のような人手作業に依存しがちな工程のKPIをいかに改善するかが、物流戦略の差を生みます。現場オペレーションの見直しやITツールの活用に加え、自動梱包ラインのような設備投資も、KPI改善の有力な選択肢として検討する価値があります。
まずは小さく始め、数値で語れる物流へと一歩ずつ近づけていきましょう。梱包工程のKPI改善について具体的に検討したい場合は、導入実績200件超の当社の無料相談もご活用ください。
【この記事の著者】

ダイワハイテックス編集部
ダイワハイテックス編集部では、物流・倉庫業務、梱包・包装に関する実務情報を発信しています。国内150ライン以上への導入実績と、社内エンジニアによる設計・保守の知見をもとに、現場の作業効率化、省人化、コスト削減につながる情報を分かりやすくお届けします。









